2025.08.25
不動産売却で知っておきたい査定方法③~収益還元法とは?~
 
                    不動産の査定方法には 原価法・取引事例比較法・収益還元法 の3つがあります。
本記事では、投資用物件の評価でよく使われる 収益還元法 を解説します。
収益還元法とは?
これからその不動産が生み出すお金(家賃など)を基準に、いまの価値を求める方法です。
主にアパート・マンション・オフィス・店舗など、収益物件の評価に適しています。
収益還元法には2種類あります。
① 直接還元法(Direct Capitalization)
② DCF法(Discounted Cash Flow)
① 直接還元法
仕組み(式はカンタン)
価格 = 1年間の純収益(NOI) ÷ 期待利回り(Cap Rate)
- NOI:家賃収入から空室損や管理費・修繕費などの運営費を引いた「物件の稼ぐ力」。
 ※ローン返済や税金は含めません。
- Cap Rate:投資家がその物件に求める利回り(地域・種別・リスクで変わる)。
☞ 強み:計算が速く、相場感をつかみやすい(安定収益の物件に向く)
☞ 弱み:単年の収益・利回りに頼るため、将来の変動を織り込みにくい
Cap Rate(期待利回り)はどう決まる?
次の要素で上下します。
- 立地(都心ほど低め、郊外や地方は高めになりやすい)
- 用途・築年(住居系 vs オフィス/商業、築浅 vs 築古)
- リスク(空室の出やすさ、賃料の安定性、将来の修繕負担 など)
✪一般例(あくまで目安)
- 都心の新しめ住居系:3〜4%
- 郊外・築古の木造アパート:6〜8%
- 地方の商業・オフィス:7〜10%
 ※実際は個別事情で大きく変わります。
具体例
年間のNOIが 240万円、周辺のCap Rateが 6% なら
価格 = 240万円 ÷ 0.06 = 4,000万円
② DCF法(Discounted Cash Flow Method)
方法(=何をするか?)
将来のキャッシュフローを年ごとに「現在価値」に割り引いて合計し、さらに売却時の価格(終価:Terminal Value)も割り引いて足す方法です。
背景(なぜこの考え方をするの?)

Q. どっちの100万円のほうが「価値が高い」と言えるでしょう?
1)今日もらえる100万円
2)5年後にもらえる100万円
☟☟☟
A. 答えは 1)今日の100万円。
理由は、お金には時間的価値があるからです。
今日の100万円はすぐに預金や投資に回して増やせるチャンスがあります。
一方、5年後の100万円は、その間の利息・運用機会を逃し、さらに物価上昇(インフレ)で実質価値が目減りしている可能性があります。
だから、将来もらうお金はいまの価値(現在価値:PV)に直して比較します。
基本式:現在価値(PV) = 将来価値(FV) ÷ (1 + 割引率 r)^年数 n
100万円の計算例(割引率3%の場合)
5年後の100万円の現在価値 = 1,000,000 ÷ 1.03^5 = 約862,609円(≈ 約86.3万円)
つまり「同じ100万円」でも、受け取る時点によって「いまの価値」は違ってきます。
この考え方を査定に応用したのがDCF法です。
DCF法では、将来の家賃収入や売却代金を年ごとに現在価値へ割り引いて合計し、価格を求めます。
具体例
あるオフィスビルを5年間保有して売却する想定:
- 毎年のNOI:500万円
- 割引率:5%
- 5年後の売却価格:5,000万円

年ごとに現在価値へ割り引くと(四捨五入)
- 1年目:500 ÷ 1.05 = 約476万円
- 2年目:500 ÷ 1.05² = 約454万円
- 3年目:500 ÷ 1.05³ = 約432万円
- 4年目:500 ÷ 1.05⁴ = 約411万円
- 5年目:500 ÷ 1.05⁵ = 約392万円
- 売却価値:5,000 ÷ 1.05⁵ = 約3,918万円
合計 ≒ 約6,080万円
☞ 強み:賃料の増減・空室・修繕・出口価格まで織り込め、投資判断に近い
☞ 弱み:前提(賃料・空室・割引率)次第で結果がブレやすく、作業コストも高い
直接還元法とDCF法の「使い分け」早見表
| 観点 | 直接還元法 | DCF法 | 
|---|---|---|
| 向くケース | 安定収益の小〜中規模物件/相場感の把握 | 中長期で変動要素が多い物件/大型・ファンド案件 | 
| 計算の速さ | 速い | やや手間がかかる | 
| 将来変動の反映 | 弱い | 強い | 
| 説明のしやすさ | 直感的 | 前提の説明が必要 | 
まとめ
- 収益還元法は「物件の稼ぐ力」で価値を見る方法。
- 直接還元法は速くてシンプル、DCF法は精緻で実態に近い。
- DCF法の肝は “将来のお金をいまの価値に直す” こと(時間価値)。
- 実査定では、Cap Rateの根拠(事例・リスク・市況)や、DCFの前提(空室・修繕・出口等)を丁寧に確認するのがコツ。
HEIBEI不動産では、査定・ご相談はすべて無料で承っております。
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