2025.10.06
不動産売却の諸費用② マイホームを売却する際に知っておきたい4つの主要な特例・控除制度
 
                    
前回の記事では、不動産売却の際の諸費用の一覧を見てきました。
「譲渡所得税」について、より詳しく掘り下げていきます!
不動産を売却すると、「売却益(=譲渡所得)」に対して税金がかかります。
しかし、マイホームなどの居住用不動産については、税負担を大きく減らせる特例制度がいくつも用意されています。
この記事では、まず「不動産売却にかかる税金の基本」をわかりやすく整理したうえで、
マイホームを売却する際に知っておきたい4つの主要な特例・控除制度を紹介します。
1. 不動産売却でかかる税金の基本
不動産を売却して利益が出た場合、その利益部分を「譲渡所得」と呼びます。
この譲渡所得に対して、所得税と住民税が課税されます。
🔹譲渡所得の計算式
譲渡所得 = 売却価格 −(購入費用+売却費用)
例:
- 購入価格:2,000万円
- 売却価格:2,500万円
➡ 2,500万円 − 2,000万円 = 500万円(譲渡所得)
この500万円が「課税対象」となります。
2. 所有期間による税率の違い
不動産の税率は、「どのくらいの期間所有していたか」によって大きく変わります。
所有期間が5年を超えているかどうかで、「長期」か「短期」に分類されます。
| 区分 | 所有期間 | 所得税 | 住民税 | 合計税率 | 
|---|---|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% | 約39% | 
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% | 約20% | 
※「5年以下」とは、売却した年の1月1日時点で取得から5年を超えていない場合を指します。
(例:2019年7月に購入 → 2025年1月1日時点では5年未満 → 短期扱い)
🔹税額の目安
| 区分 | 売却益(譲渡所得) | 税率 | 税額の目安 | 
|---|---|---|---|
| 短期譲渡(5年未満) | 500万円 | 約39% | 約195万円 | 
| 長期譲渡(5年以上) | 500万円 | 約20% | 約100万円 | 
つまり、同じ500万円の利益でも、所有期間が5年を超えるかどうかで税金が約2倍違うという点がポイントです。
3. 不動産売却で使える4つの特例・控除制度
① 居住用財産の3,000万円特別控除
マイホームを売却した際に最もよく使われる制度です。
譲渡所得(売却益)から最大3,000万円まで控除でき、多くのケースで非課税になります。
例:
2,600万円で購入 → 2,900万円で売却(利益300万円)
→ 300万円 − 3,000万円控除 = 課税なし(0円)
✅ 主な適用条件
- 自分または家族が実際に住んでいた家であること
- 売却時に他人へ貸していないこと
- 住まなくなってから3年以内に売却すること
- 親子や夫婦など「特別な関係のある人」への売却ではないこと
- 確定申告が必要(自動適用ではありません)
👉 詳細はこちら
国税庁|マイホームを売ったときの特例
② 軽減税率の特例(10年以上所有・居住している場合)
マイホームを10年以上所有・居住している場合、税率がさらに下がります。
| 区分 | 通常(長期譲渡) | 特例適用後 | 
|---|---|---|
| 税率 | 約20% | 約14.21%(所得税10%+住民税4%+復興税0.21%) | 
「3,000万円特別控除」と併用可能で、
3,000万円控除を超える利益がある場合に特に効果的です。
✅ 主な適用条件
- 売却年の1月1日時点で所有期間が10年以上
- 居住用として使用していたこと
③ 買換え・交換の特例(課税の繰延制度)
マイホームを売って新しい家を購入する場合に使える制度です。
売却益に対する課税を将来に繰り延べることができます。
つまり「今すぐ税金を払わずに済む」仕組みです。
ただし、「3,000万円特別控除」や「軽減税率の特例」との併用はできません。
どちらを選ぶかは試算して判断する必要があります。
✅ 主な適用条件
- 売却した家が自己居住用であること
- 新しい家を1年以内に取得・居住すること
- 売却価格が1億円以下であること
- 3,000万円特別控除との併用は不可
④ 譲渡損失の損益通算・繰越控除(損が出た場合)
売却で「利益」ではなく「損失」が出た場合に使える制度です。
マイホームを売却して損が出たとき、給与や事業所得など他の所得と相殺(損益通算)できます。
さらに、控除しきれない分は最長3年間繰り越し可能です。
例:
マイホーム売却で500万円の損失 → 年間所得と相殺 → 税負担を軽減。
✅ 主な適用条件
- 自己居住用の住宅であること
- 売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えている
- 売却損失が発生していること
4. 特例・控除の比較まとめ
| 特例名 | 対象 | 効果 | 併用可否 | 
|---|---|---|---|
| 3,000万円特別控除 | マイホーム売却 | 最大3,000万円まで非課税 | 他特例と併用可(一部除く) | 
| 軽減税率の特例 | 10年以上所有・居住 | 税率が約14.21%に軽減 | 3,000万円控除と併用可 | 
| 買換え・交換の特例 | 買い替え時 | 課税を繰り延べできる | 3,000万円控除と併用不可 | 
| 損益通算・繰越控除 | 売却損が出た場合 | 所得税・住民税を軽減 | 条件により可 | 
まとめ
不動産売却には、
- 「譲渡所得を減らすための控除」と
- 「損失を救うための控除」
 の両方があります。
どの制度を使うかで、最終的な手取り額は大きく変わります。
売却を検討する段階から、不動産に詳しい税理士などの専門家に早めに相談しておくことが重要です!
 
             
                 
                         
                         
                 
                 
                